【付随する症状】
甲状腺の腫れ、ややふくよかな体型で、思い悩むことが多く、顔色はやや青白い。手足の冷えがあり、便通は1日1回、小便は1日12回と頻回。血圧は正常。雨が降る前に頭が重くなり、高い音の耳鳴りも。唇や口が乾き、下腹部や腰が冷えるのも気になるとのこと。
【舌の状態】
湿り気があり苔はなく、舌の裏の静脈の怒張もみられません。
【経過】
まず、下腹部や腰の冷えを目安に自家製漢方煎じ薬を1ヶ月服用いただいたところ、雨の前の頭重感や腰の冷えが改善。尿の回数は減り、1回の量が増えました。同薬を3ヶ月続けると冷えの改善がさらに進み、尿の回数も12回から6回に減少しました。ただし生理はまだ来なかったため、血流をよくする自家製漢方粉薬へ切り替えたところ、30日後に4日間の生理がありました。
その後、ご結婚。
生理痛や腰痛、足の裏のほてり、小便が出にくく夜間尿も増えたため漢方丸剤を服用。尿の出も良くなり、生理痛も落ち着き、生理時の血の塊も消え、基礎体温の高温期も安定しました。2ヶ月後、妊娠されました。
さらに4年後、第二子を希望され、頭痛、お腹の張り、中耳炎、軟便、皮膚のかゆみを訴えられたため、自家製漢方煎じ薬を2ヶ月服用し、無事妊娠に至りました。
【考察】
この症例は、古典『金匱要略』婦人雑病篇にある条文を応用したものです。「胞系了戻するが故に溺するを得ず」とは、膀胱や子宮の状態が悪くなると尿の通りが滞り、子宮も冷えて痛みや不調を生じる、という意味です。治療により尿の流れが良くなることで下半身の冷えも取れ、基礎体温の高温期が安定し、妊娠しやすい状態になったと考えられます。