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不妊治療中に「子宮内膜が薄い」「子宮筋腫が着床のじゃまをしているのかも」などと言われる人は少なくありません。子宮の環境をととのえるために漢方薬にできることを考えました。

「内膜が薄い」と言われました。子宮のコンディションをよくするための漢方薬について、教えてください

そんなご質問がありました。

超音波画像を見ていた医師に「子宮内膜が薄いね」と言われました。体外受精を考えているのですが、子宮内膜が薄いと着床率も悪いと聞いたことがあります。子宮内膜を厚くしたり、子宮の状態を着床しやすいコンディションにする漢方薬ってありますか?

(治療法1年半・37才)

よい子宮の環境は、血行がよく、温かく、きれいなこと。そのためには、「お血」の体質を改善していきます。体のタイプ別に、食生活を見直すことも効果があります。

さて、漢方処方で元気な卵をつくることができ、めでたく卵と精子が受精したとします。すると次のステップとして考えなくてはいけないのは、その受精卵が無事に卵管を通り抜け、子宮に着床できるかどうかということ。「受精卵が通る道」である卵管に癒着などのトラブルがあったり、受精卵が着床するベッド」である子宮内膜に問題があったり、筋腫がじゃまをしたりするとせっかく受精した卵もうまく着床できず、新しい命が育らません。漢方ではこうした卵管や子宮のトラブルはすべて「血」体質が原因になって起こると考えています。お血というのは、古い血が滞る。という意味。大事なホルモンバランスを崩す要因にもなります。受精卵が無事に着床、成長していくためには、血行よく、温かく、きれいな子宮の環境、あまり、お血のない状態が理想なのです。

漢方の‘お血‘をとり除く処方は、子宮内膜を厚くする効果も期待できます。また、お血は、生理痛、生理不順、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などの婦人科疾患を引き起こすばかりでな

く、痔、虫垂炎、肝炎、胃炎、動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、自律神経失調症、ガンなど、体にさまざまな悪さをする原因になると考えられています。ですから不妊症だけでなく、さまざまな病気から体を守るためにも、お血を予防する生活が大事なのです。

お血は生理の異常をそのままにしていたり、産後の無理や流産、妊娠中絶、打撲、手術などをきっかけに起こることがあります。また最近では、運動不足、便秘、環境汚染なども原因になる

と考えられています。さらに食品の添加物・農薬・保存料などが血を汚し、ドロドロ状にするため血液循環が悪くなり、古い血が滞って血を引き起こすこともあります。お血は食生活と密接に関係していますので、まずふだんの食事から気を配り体質改善を心がけましょう。お血に

は、人によって陽性と陰性の2つのタイプがあります。陽性お血の人は体力が充実していて暑がりで便秘がち。こういう人は牛、豚、羊など4本足の肉類、鮭やますなどの赤身の魚や油を避

けて野菜や大豆中心の日本食に切りかえるとよいでしょう。陰性病血の人は寒がりで冷え性、疲れやすいなどの特徴があるので、生野菜や酢など体を冷やす食べ物を避けるようにするとよい

でしょう。さらに「駆於血剤」と呼ばれる漢方の処方をじょうずに用いれば‘お血‘が改善でき、その結果、子宮環境も健やかにととのえられると思います。

処分の実例

「両方の卵管が通じていない」と言われたが、お血をとり除いて一自然に妊娠!

今回ご紹介する患者さんは32才の女性。身長159㎝で体重49Kg、 不妊治療歴は2年。1年

前から総合病院で治療を受けていましたが、病院では「子宮筋腫、びらん、卵巣機能不全、両

方の卵管が通じていない」と言われたそうです。生理不順で、生理の出血には塊が多く、生理痛もあるといいます。その他の症状としては生理前にイライラする、めまいがする、雨の降る前や季節の変わり目に頭が重い、顔色が青白いなど。またお話を伺うと甘いものが大好きで20才のころから血糖値が高く、父親は糖尿病だそうです。 たっぷりの糖類は体を冷やしてしまいます。このかたの場合、とりすぎた糖分がおなかを冷やして血行を悪くし、内臓の筋肉を縮めて卵管の通りを悪くしていたのでしょう。さらに冷えによって卵巣機能まで不全になったと考えられます。そこで体を温め、筋肉の緊張をゆるめる当帰芍薬散(陰性病血の人におすすめの処方)をおすすめしました。すると1カ月間の服用で、それまで8~10日周期だった生理が月に2回あり(子宮にたまっていた古い血が排出されたのでしょう)、その後2カ月で自然に妊娠されました。これは漢方薬で赤血体質を改善することで、病院では「通じていない」と言われた卵管も無事通ったという例ですが、実は「漢方処方で卵管が通った」というかたは珍しくないのです。このかたは無事ご出産され、現在は2人目の妊娠を考えていらっしゃいます。