不妊症・・・昔の食に学ぼう

不妊症・・・昔の食に学ぼう

人口が爆発的にふえているのは、食料が豊かではない国

今の日本は少子化が問題になっていますが、昔は5人、6人とたくさんの子どもを産むのがあたりまえでした。特に日本でたくさんの赤ちゃんが生まれたのは戦後間もなくの食糧難の時代。いわゆる団塊の世代と呼ばれる人たちが生まれたころです。戦前あるいは戦後間もなくと現代では生活習慣が大きく変化しています。その変化の中でも不妊症と関係があるのでは、と思われるのが次の3つです。

  •  初婚年齢が若かった
  •  食べ物は自然のものを食べていた
  •  農業中心の社会だったので、体をよく動かしていた

まず①ですが、特に戦前は10代で結婚する人が多く、「20才を過ぎるとお見合いの話もなくなった」という話も聞きます。ところが今は晩婚化が進み、日本人の初婚年齢は平均27才といわれていますから、初婚年齢だけを見ても約10年もおそくなっているんですね。

次に②です。今、世界で人口が爆発的にふえているところはいわゆる先進国ではなく、インドやアフリカ諸国などの、どちらかというと食料もあまり豊富ではない国や地域。なかには飢餓

に苦しむ国もあります。戦後間もなくの日本も同様に食料が不足していましたが、逆に妊娠という点から見ると、食生活が豊かすぎないほうがよいのではないかと思われます。

「砂糖」「冷たいもの」は大敵! スパッとやめて妊娠した人も

食べ物の変化の中でも、昔と今とで大きく変わっているのが「甘いもの」と「冷たいもの」の摂取量です。昔の日本人は砂糖を使った甘い料理やお菓子を食べるのはお盆やお正月など特別なときだけ。ふだんとる甘いものといったら、さつまいもやかぼちゃなど、素材の持つ自然な甘みが主でした。ところが現代ではチョコレートやキャンディ、菓子パンやドーナツなど、砂糖を使った食べ物や、品種改良された甘い果物を日常的にとっています。

また、冷蔵庫がなかった昔にくらべて、私たちの周囲にはいつでも身近に冷えた飲み物や食べ物があります。昔の人は、現代人のように冷たいものの食べすぎで体の中が冷えるということ

もほとんどありませんでした。昔の人が主食にしていた玄米などは消化吸収に時間がかかるので、食べたあとゆっくりと血糖値が上がります。しかし、甘いものは、食後すぐに血糖値が一気に上がります。一般に妊娠中はふだんよりも血糖値が高いものなのですが、日常的に甘いものを食べつづけていると、体が「妊娠している状態」だと勘違いして、排卵機能やホルモンバランスの乱れを招く……そんなことがあるのではないでしょうか。実際、私たちの薬局に相談にいらっ

しゃる不妊症で悩んでいるかたにも、食事のたいせつさをお話しして甘いものをやめていただいたところ、体調がよくなり、自炊妊娠できた人もいます。

食事は人間の体をつくる基本。その食事の内容がよくなければ、いくらよい漢方薬を処方してもなかなか症状は改善されません。日常的に食べている砂糖を控えるのは、最初はつらいかも

しれません。でもがんばって2週間がまんすれば、不思議とそれほど食べたくなくなるものです。

「甘いもの・冷たいものをスパッとやめて、体を適度に動かす」。あなたもきょうからぜひ始めてみてください。

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砂糖をやめ、玄米中心の食事で漢方の効きめもスムーズな体に

ご相談にいらしたのは36才、身長152㎝、体重48Kgの女性。4年前から病院で治療をさ

れているそうですが、不妊の原因は不明。月経は5日周期で基礎体温は多少の乱れがあり、プロラクチンが高いのでテルロンを服用中。子宮内膜症の手術の経験があり、体外受精も2回チャレンジしたものの妊娠には至らなかったそうです。お話を伺うと、とても冷えが強く、しもやけに悩まされることもたびたび。尿の回数も多く、疲れやすく、手のひらに汗をかき、精神的に不安感の強いかたでした。そしてなによりも大の甘いもの好きで、菓子パンや洋菓子をよく食べていました。そこで「砂糖の入ったものをいっさいやめる」「ふだんの食事は玄米を食べる」という指導をし、漢方的には冷えと血行不良を改善する温経湯を処方しました。すると1カ月後には基礎体温の乱れがなくなり、体がポカポカして調子がよいとのこと。さらに「食事表」をお渡しして実践していただいたところ、4カ月後に自然妊娠!食事を中心に生活改善したことで、漢方薬の効きめもスムーズだったのでしょう。漢方薬は人間の生命力に働きかけるもの。その生命力の 源である食事や運動に気をつけられたのがよい結果につながったのだと思います。